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ART-Message page01
三澤真也氏(東京在住)からのお便りです。
フィリピン、
インドネシア感想
三澤真也 Shinya Misawa

フィリピン、インドネシアから帰ってきて以来、よく絵を描く。よく寝る、みたいに。夜絵を描いていると夜風に気が触れて、ふと筆が止まって考える。「結局のところ人生は、生きているということでしかないんだろう。ただ花が意味もなく、精一杯咲こうとするのとおんなじなんだろう。」
絵を描くのに疲れた夕暮れ時、霞の空に浮かんでいるおっ月様を眺めていると、花粉蛍がぼんやりと僕の部屋の窓から入ってきて、僕の鼻をかすめる。すると線香花火がはじけたみたいにパッとなって、ふと僕は花の匂いに気づかされる。それでなんとなく考える。
「そうか、この花の匂い香る僕たちの世界とアンドロメダ輝く壮大な宇宙は繋がっていてひとつなんだ。僕たちが花の香りに微笑し、空を美しいと思い、友達と笑っているこの世界と、宇宙はひとつなんだ。そして、その果て知り得ぬ全体の中で、僕らが生きている人生はほんとに束の間の一瞬なんだ。けれどもそれゆえに、その刹那のきらめきのなんと愛しいことか。
「儚きこと、 これ良きかな。」(稲垣足穂)
僕たちはこの儚き一瞬の輝きを、複雑化する世界のシステムに足を捕られて、その人生の煌めきの中にすべての色を反映させる前に燃え尽きてはならない。システムに屈してはならない。なぜなら人は人間らしく生きるべきであり、そういった意味において、人生は楽しむものだから。

今回のツアーのなかで、僕たちはフィリピンのマニラにあるトラッシュマウンテンと呼ばれるゴミの山へ行った。そして、そのゴミの山と共に暮らす人々を見てくることができた。彼らの暮らしはもちろん物質的にはギリギリであろうし、ゴミに汚染されたその村で暮らす子供たちの中には、(おそらく汚染によって)頭が禿げてしまっている子供などもいた。
それでもそこに暮らす子供たちはよく遊び、笑っていた。そんな彼らの暮らしを見ながら、今の日本の社会の様子を考えると、僕には今の日本の精神的な貧しさも物質的な貧しさと同じくらい深刻な問題であると感じられた。

今日本の社会では子供が殺人事件を起こしたり、自殺も多くて、そんな子供たちを「今の子供たちは何を考えているのか分からない。」とかテレビなんかではよく言っている。けれども、それは子供が変わったわけではなくて、社会のシステムが変わったわけで、子供はいつの時代も本当は美しく咲きたいと願っている花たちなのだと思う。それは別に子供だけではなくて、大人だって人はみんな同じだと思うけれど。
日本なんかは社会のシステムがますます複雑になって、この複雑さを読み解いて、間違った社会のシステムを直していくのはまだまだ時間が掛かりそうだけれども、キーワードはやっぱり「愛」だと思う。そして、基本は何にも変わっていないと思う。僕たちは僕たちが住むこの地球を、未来の子供たちのためにどうしていくべきかを学び、考えて、話し合い、出来ることから行動していくしかないんだと思う。

僕らもそろそろ未来を考えていかなければならない世代になったから、もう人任せではいられない。大人になるということは、成人したからとか、お金を自分で稼げるようになったからとか、セックスをするようになったからとかそういうことではないと思う。
それらはそれだけでは自立ではなくて、寄生だと思う。社会に寄生しているだけで、あんまり気持ちのいいことじゃない。大人になるということは、自分たちの次の世代、それからまた次の世代も人間らしく生きられるためにどうすればいいかを考えて、そういう世界を育んでいくことだと思う。そのためには僕ら自身もいつでも風通しが良い、健全な精神を宿していなければならない。
旅をすることや、二パフのツアーに参加することだけが、その当たり前に人間らしく生きるための手段ではないと思うけれども、僕にとっては今の社会に足をすくわれてしまいそうになったとき、日本の社会の外に出て、笑って暮らす違う社会の人々に接することは本当に救われる。
今回も酒を飲みながら、そんな彼らの人間らしさを肌で感じた。そしてそんな中、解放された僕の魂はゆらゆらときらめきながら、僕は今の日本の社会システムに怒りを込めて、なんとかしなきゃと思った。それで、結局のところ、僕にできることは、表現することなのだと思う。たとえ僕の表現をひとりしか観てくれる人がいなくても 愛は、バイブレーションだから、伝達する。
まずは僕から笑わなきゃ。
三澤真也 Shinya Misawa
■参考資料:
参考資料1:artist file No.26 三澤真也 Shinya Misawa
参考資料2:ART-Letter07: 台湾レポート in TIPAF'07 三澤真也 Shinya Misawa
参考資料3:★◇Record:◇記録◇ NIPAF'07春:名古屋公演
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